工場(こうば)のお仕事3 製織

今回は杣長の製織についてご紹介致します。 杣長の製織の特徴は、なんといっても起毛した生地を製織できることです。杣長の製織方法は二重織天鵞絨といって、グランドとなる生地を一度に2枚製織しながら、その生地の間を、パイルとなる経糸が往復するようにして織り上げていきます。パイル糸でつながった状態の2枚の生地は、織機の一番手前で左右に走っているナイフで切り分けられ2枚の天鵞絨生地へと仕上がっていくのです。

二重織天鵞絨を織っている会社はいくつかありますが、杣長のようにシャトル織機を使って二重織天鵞絨を織っている会社はかなり少なくなってきています。

シャトル織機とは、シャトルの中に(よこ)(いと)をおさめて、経糸の間をシャトルを走らせることで織り上げていく手法です。
現在は、シャトルではなく、水や空気で高速に緯糸を飛ばす織機がほとんどです。
シャトル織機で製織するとスピードはゆっくりですが、緯糸を優しく打ち込んでいくので、糸へのダメージが少なく、それでいて高密度に織り上げることができます。杣長の生地はパイルが抜けにくく、織がしっかりしていると評価頂けるのは、シャトル織機を使っていることも一因と言えるでしょう。

緯糸がおさめられたシャトル

天鵞絨を美しく織り上げるポイントはたくさんありますが、そのひとつにナイフ管理があります。 ナイフの切れ味が悪いと、パイルが美しく仕上がらないので、ナイフがひと走りするごとに、織機の左右に設置されている研石で自動的に研がれています。ナイフのすり減り状況を毎日確認し、適切なタイミングでパイルにナイフが当たるよう位置調整を行っていきます。

杣長の織機は50年ほど前から使い続けており、現在ではシャトル織機の製造は終了しています。機織りの技術力というと糸の扱い方と思われがちですが、当社のように古い織機を扱う場合には、織機それぞれの個性を理解し、機械メンテナンスや織りたい生地と織機の相性を考えるなど、織機といかにうまく付き合うかが、織のクオリティを高めることにつながってくるのです。