前回は部分整経についてご紹介しましたが、今回は、整経した経糸を織機につなげる「経継ぎ」をご紹介します。
さて、前回のように部分整経機を使って経糸を巻き付けた大きなビーム。当社の天鵞絨用織機1台に対して何本のビームをセッティングするでしょうか?
答えは2本もしくは3本です。地組織用に1本、そしてもう1本はパイル糸用。生地の種類によってはパイル糸を2種類使うこともあるので、その場合はパイル糸用にもう1本ビームを準備します。経糸でパイルを製織するのが天鵞絨(ベルベット)、緯糸でパイルを製織するのが別珍です。(ちなみに、ベロアは織ではなく編素材です)
経糸を織機にセットする際は2か所の穴に経糸を通します。紋紙という織組織データの指示を伝えるワイヤーヘルドと、経糸が絡まらないよう糸位置を定めるための筬の穴です。
全ての経糸を2回も穴に通すのは大変な作業なので、通常は既に織機にセットされている経糸に、新たに整経した糸をつなぎたします。これを「経継ぎ」といいます。 ただ、経糸本数は多い時には1万本にもなるので、繋ぐだけでも大変な作業です。
経糸の本数が比較的少ない時には、二人がかりで手作業で経継作業を行いますが、量が多いときは経継用の機械を使います。
手作業の場合は、二人がかりで1時間で仕上げます。糸の束の中から順序通り1本ずつ器用に引き出し、手早く結んでいきます。二人で作業するので、各作業者の糸を引っ張る強さや糸の結び目の位置が違ってしまわないように気を付けます。
経継用機械はセッティングするのに時間がかかりますが、スタートすると一人で1時間で仕上げることができます。
くしで糸のテンションを丁寧に揃えて、ビームからまっすぐに糸を引き出して機械にかけてやると機械が1本ずつ結んでくれます。機械とはいえ、手動で取手を回して稼働させます。熟練の職人は束になっている糸全体に均一にテンションをかけられるので、機械を速く回していくことができますが、経験が浅いと機械を動かすにも時間がかかります。
糸の扱い一つ一つに、職人の経験値が問われるのです。
次回はいよいよ製織についてです。