本日から、天鵞絨にまつわるお話をブログで紹介させていただきます。 第一回目は、日頃皆さんから様々な質問をいただくのですが、その中でも特に多かった4つの質問について、お答えいたします。ご興味を持ってお読みいただければ幸いです。
1、天鵞絨が日本で織られるようになったのはいつ頃ですか?天鵞絨の歴史を教えてください。
天鵞絨が初めて日本に渡来したのは、1543年頃。種子島に伝来した鉄砲を包んでいた布が天鵞絨であったといわれています。
それからおよそ100年の間は日本においては製織法が分かっていませんでした。 それが、慶安年間(1648-1652)に西陣の者が南蛮渡来品の天鵞絨の裂中に、銅線の一片が残存するのを発見します。これに暗示を得て、銅線を緯糸に使い、その上にパイル用の経糸を這わせて、織物の表面に輪奈(ループ)をつくり、その中を通っている銅線を抜いて、パイル状にする製織する方法を、苦心の末に確立するのです。
その輪奈の部分をナイフで切り、毛羽立たせれば、皆さんがよくご存じの天鵞絨(ベルベットと同意)になります。
製織法が進化するにつれてその品質は高くなり、16世紀中頃から天鵞絨を製織していた中国よりも高い品質を誇るようになったそうです。このような経緯で、西陣が日本における天鵞絨の産地となりました。
2、現在、天鵞絨を専門に織っているのは西陣では杣長一軒だということですが、全国では何軒くらいありますか?
福井、滋賀、和歌山、京都でおよそ12軒ほどです。織機のひとつとして天鵞絨用製織機も所有なさっている大手製織メーカー様や大手帯メーカー様を加えれば、数はもう少し増えるでしょう。
3、現在、天鵞絨はファッション以外にどんなところに使われていますか?
弊社では化粧用の起毛パフと液晶パネルの製造工程で使用する研磨布を製造しています。
化粧用パフは、ファッション用の天鵞絨よりもパイル長が長いことが特徴です。
液晶製造用研磨布は、液晶膜の分子を一定方向に配向させるために配向膜を一定方向に高速で摩擦するために使われます。弊社の研磨布は、織組織に工夫を加えることでパイルが自ら傾斜しているという特徴を持っています。
弊社では製造していませんが、カーテンやクッションカバーなどのインテリア製品や緞帳、下駄の鼻緒、造花や印鑑の内張などにも天鵞絨は使用されています。
4、天鵞絨の模様を表現する方法は何通りありますか?
織りで模様を表現するなら、ドビー織機を使って縞柄や市松柄をつくる方法とジャカード織機を使って複雑な柄を製織する方法があります。
後加工で模様をつけるのであれば、生地の上からプリントする方法があります。文様を彫り出した金属の型を熱して押しつけるエンボス加工や、糸を溶かして柄を表現するオパール加工を、プリントと組み合わせると立体的に柄を表現することも可能です。
模様の表現とは異なりますが、熱や蒸気と、圧力を加えてシワを固定させるシワ加工を加えて表現をひろげることもできます。
ご質問への回答は以上となります。奥深い天鵞絨の世界ですが、少しでも楽しんでいただけましたでしょうか?
他にも天鵞絨に関して知りたいことがありましたら、どうぞお問合せください!